天気予報でおなじみの雲の画像。あれを宇宙から届けている気象衛星「ひまわり」は、空の同じ場所に浮かび続けているように見える。だが、ひまわりは静止しているわけではない。実はものすごい速さで地球の周りを飛び続けている。

7月14日は、『ひまわりの日』。ひまわりにとって特別な日だ。1977年のこの日、日本初の静止気象衛星「ひまわり」初号機が打ち上げられた。毎日の天気予報を大きく変えた、宇宙からの観測の始まりである。
初代ひまわりはアメリカから飛び立った

ひまわり初号機が打ち上げられたのは、1977年7月14日午後7時39分。場所は日本ではなく、アメリカのケープカナベラルだった。打ち上げ後に試験を重ね、翌1978年4月から本格的な気象観測を始めた。
名前は親しみやすい花だが、正式には「静止気象衛星GMS」という。地球を取り囲むように気象衛星を配置し、世界規模で天気を監視する計画の一員として誕生した。
初号機とひまわり2号は、衛星から見える地球全体を3時間ごとに撮影していた。1日に8回である。当時としては画期的だったが、雲が急速に発達する様子を細かく追うには、3時間という間隔は長かった。
「静止衛星」は本当は止まっていない
ひまわりは静止気象衛星と呼ばれる。ここで最大の「へえ〜」ポイントだ。静止衛星は宇宙空間で停止している衛星ではない。
地表から約3万5800キロメートル上空の赤道上を、地球の自転と同じ向き、ほぼ同じ周期で回っている。地球が一回転する間に衛星も一周するため、地上からはいつも同じ空の位置にいるように見えるのだ。

たとえるなら、回転するメリーゴーラウンドの隣の馬に乗る人を見ているようなものだ。どちらも同じ速さで回れば、相手は自分の横に止まって見える。しかし、外から見れば二人ともぐるぐる動いている。
静止衛星は赤道上空に置く必要がある。日本の真上に浮かせるのではなく、赤道の上から日本を斜めに見下ろしている。衛星放送のパラボラアンテナが日本では南寄りの空を向いているのも、静止衛星が赤道上にいるためだ。
現在は10分ごとに地球を観測
ひまわりの観測能力は、初号機から大きく進化した。ひまわり8号・9号は、衛星から見える地球全体を10分ごとに観測できる。さらに日本周辺や台風など、狙った領域は約2.5分ごとに観測できる。
初号機の地球全体の観測は3時間ごとだったので、単純に間隔を比べると現代は18倍も細かい。昔なら次の画像を待っている間に状況が大きく変わることもあったが、今は雲が湧き上がり、まとまり、移動する様子を短い間隔で追える。
また、現在の観測装置は、人の目に近い可視光だけでなく、目には見えない赤外線など複数の種類の光を使う。昼間の雲だけでなく、夜間の雲の様子、水蒸気の分布、海面や雲の温度なども調べられる。天気予報で見る一枚の画像には、色の違う何枚もの透明シートを重ねるように、多くの情報が詰まっているのだ。

台風だけではない、ひまわりの仕事
ひまわりの代表的な仕事は、台風や発達する低気圧の監視である。海の上は地上の観測所が少ないため、宇宙から広い範囲を続けて見られる衛星が特に役立つ。
観測対象は雲だけではない。火山の噴煙、黄砂、海氷などの監視にも衛星画像が使われる。私たちが傘を持つかどうか決めるための天気予報から、航空機や船の安全、防災まで、ひまわりの情報は幅広く活用されている。

気象衛星は未来の天気を直接見ているわけではない。今の地球の状態を正確に捉え、そのデータを予報計算に生かすことで、これからの変化を予測しやすくしている。医師が体温や検査結果から体の状態を判断するように、気象予報では衛星が地球の状態を測る大切な目になっている。
いつもの雲画像は宇宙からの定期便
スマートフォンで雨雲や台風の動きを確認できる日常は、1977年7月14日に飛び立った初代ひまわりから続く技術の積み重ねによって支えられている。
次に天気予報の衛星画像を見たら、画面の向こうを想像してみてほしい。赤道上空約3万5800キロメートルで、地球と足並みをそろえて飛ぶ衛星が、雲の姿を休まず届けている。「静止衛星は、止まらないから静止して見える」。この当たり前になった日常が、ありがたい事だと改めて感じる。



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