
「鶴は千年、亀は万年」——日本人なら誰でも知っているこのことわざ。でも、カメって本当に1万年も生きるの?と聞かれたら、答えに詰まる人がほとんどじゃないだろうか。
5月23日は「世界亀の日(World Turtle Day)」。カメについて正しく知り、その保護を考える国際記念日だ。この機会に、カメにまつわる「知ってるつもり」の常識を、根本からひっくり返してみよう。
世界亀の日とは?

世界亀の日は、2000年にアメリカの非営利団体「American Tortoise Rescue(アメリカン・トータス・レスキュー)」が制定した国際記念日だ。カメという生き物への関心を高め、生息環境の保護を呼びかけることを目的としている。
実はカメは現在、陸上脊椎動物の中で最も絶滅の危機に瀕しているグループのひとつとされている。約300種のうち、半数近くが何らかの危機にさらされているというから驚きだ。「万年生きる」どころか、存在自体が危うくなっている種も少なくない。
「亀は万年」の真実——実際はどれくらい生きる?

では実際のところ、カメはどれくらい生きるのだろうか。
一般的なペットのカメ(クサガメ・イシガメなど)の寿命は、30〜50年程度。長生きな部類だが、「万年」にはほど遠い。
それでも、大型のリクガメになると話は変わってくる。ガラパゴス諸島に生息するガラパゴスゾウガメは、確認されている記録の中で175年以上生きた個体がいる。「ハリエット」という名のガラパゴスゾウガメは、サンタクルス島亜種で1830年ごろガラパゴス諸島で生まれたとされていて、2006年まで生き、ギネス記録や複数メディアで「史上最長寿の動物の一つ」として記録された。
さらに近年では、190歳以上のセーシェルゾウガメ「ジョナサン」がギネス世界記録に認定されている(2023年時点)。1832年生まれとされるジョナサンは、2023年時点で191歳という、人間が成しえない数字に驚きだ。
「1万年」には届かないものの、200年近く生きるカメが実在する——これだけでも十分に驚異的ではないだろうか。
なぜカメはそんなに長生きなのか?
①心拍数がとにかく遅い
カメの長寿の大きな理由のひとつが、心拍数の遅さだ。カメの心拍数は、安静時でなんと1分間に10〜25回程度。個体によっては6〜15回だとも言われている。人間が60〜100回であることを考えると、その差は歴然だ。
心拍数が少ないということは、代謝(体内の化学反応)がゆっくり進むということ。代謝が遅いと、細胞の老化を引き起こすとされる「活性酸素」の発生も少なくなる。つまり、体がゆっくりしか動かない分、老化もゆっくり進むという仕組みだ。
②冬眠で代謝をほぼゼロに落とす
多くのカメは冬眠する。冬眠中のカメの代謝は通常の数分の一以下にまで落ち、心拍数も極端に下がる。この「スローライフ」な生き方が、寿命を伸ばすのに大きく貢献していると考えられている。
③細胞の老化耐性が高い
最新の研究では、カメの細胞はDNAの損傷を修復する能力が他の動物より高く、テロメア(染色体の端にある老化のカギとなる部分)の短縮スピードが遅い可能性が示唆されている。カメは遺伝子レベルでも「老けにくい」体を持っている可能性があるのだ。
2億5千万年、ほとんど姿を変えていない

カメが地球に登場したのは、今から約2億5千万年前——恐竜が栄える前のことだ。
驚くべきことに、当時のカメと現在のカメは、基本的な体の構造がほとんど変わっていない。あの独特の甲羅と、のんびりとした体型は、2億年以上かけて「完成されたデザイン」として磨き上げられてきた。
恐竜が6500万年前に絶滅したときも、カメは生き残った。大きな隕石による環境変動、氷河期……幾多の危機を乗り越えてきた「超ベテラン」が、カメなのだ。
それほどの歴史を持つカメが、今まさに人間の活動によって絶滅の危機に直面しているというのは、なんとも悲しい話である。
ウミガメの「帰巣本能」が驚異すぎる

カメの中でも特に驚かされるのが、ウミガメの帰巣本能だ。
ウミガメのメスは産卵期になると、なんと自分が生まれた砂浜に戻ってくる。その距離は数千〜数万キロにも及ぶ。GPSもコンパスも持たないのに、広大な太平洋をわたってピンポイントで生まれ故郷の浜に帰ってくるのだ。
この驚異的なナビゲーション能力の秘密は、地球の磁場にある。ウミガメは生まれた場所の「磁場の情報」を記憶し、それを頼りに何年・何十年もかけて故郷の砂浜を目指すと考えられている。
しかし、ここにも悲しい現実がある。ウミガメの卵は孵化率こそ比較的高いが、砂浜から海に出た赤ちゃんガメが無事に大人になれるのは、1000匹にたった1匹程度といわれている。天敵、漁網への混入、プラスチックゴミの誤飲……帰巣本能を持ちながらも、故郷に戻れないウミガメがほとんどという現実がある。
カメは身近な存在——知っておきたいこと

日本でもカメは古くから親しまれてきた生き物だ。神社の池にいるクサガメやミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)を見かけたことがある人も多いだろう。
実はミドリガメは特定外来生物に指定されており、在来種のカメを脅かす存在になっている。「池に放してあげる」という善意が、生態系を壊すことにつながるケースもあるため、飼っているカメを「自然に返す」行為は絶対にしてはいけない。
カメと長く付き合うためには、まずカメのことをよく知ることが大切だ。世界亀の日の5月23日は、そんなことを考えるきっかけにしてみてほしい。
まとめ——「万年」じゃなくても、十分すごい
今日分かったことをおさらいすると:
- 「亀は万年」は誇張だが、200年近く生きるカメは実在する
- 長寿の秘密は、遅い心拍数・ゆっくりな代謝・高い細胞修復能力
- カメは2億5千万年前からほとんど変わっていない「生きた化石」
- ウミガメは地球の磁場を使って数千km先の故郷の浜に帰ってくる
- 現在、カメは人間活動によって最も絶滅が危惧される動物グループのひとつ
万年は生きないけれど、200年の命をのんびりと歩むカメの生き方——なんだか少し羨ましくも感じる。今日はどこかでカメを見かけたら、ちょっとだけ敬意を持って見てみよう。
※本記事は一般に公開された情報をもとに執筆しています。最新の情報や具体的な判断については、各事項の公式情報や専門家にご確認ください。



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