「バレンタインデーって2月14日だよね。でも実は、バラと本を贈り合う日が4月にも存在する」——そう聞いたらちょっと驚きじゃないだろうか。
4月23日はサン・ジョルディの日。日本ではあまり知られていないが、スペインのカタルーニャ地方では、この日が一年で最もロマンチックな日とされている。バレンタインデーと似ているようで、実はもっと深い歴史と伝説が詰まった特別な日なのだ。
サン・ジョルディの日ってなに?
サン・ジョルディとは、スペイン・カタルーニャ地方の守護聖人「聖ゲオルギオス(英語名:セント・ジョージ)」のこと。4月23日は、その聖人の命日にあたる日だ。
カタルーニャ地方では、この日に男性は女性にバラを、女性は男性に本を贈るという風習がある。街中がバラの花で溢れ、本の特設販売コーナーが並ぶ。まるで2月14日のバレンタインが春に帰ってきたような賑わいだという。
現代では性別に関わらずバラと本を贈り合う日として親しまれている。
さらにこの日、ユネスコは「世界図書・著作権デー(世界本の日)」に制定している。つまり4月23日は、世界公認の”本とバラの日”でもあるのだ。
バラの由来は「ドラゴンの血」だった
「なぜバラ?」と思った人も多いだろう。実はこれ、ドラゴン退治の伝説が関係している。
昔々、カタルーニャの村に凶悪なドラゴンが現れ、生贄として乙女たちを食べていた。ある日、くじ引きで王女が選ばれてしまう。そこに現れたのが騎士・サン・ジョルディ。彼はドラゴンを倒し、王女を救い出す。
その時、ドラゴンの血が地面に流れ落ちた場所から、真っ赤なバラが咲き誇った——という伝説が残っている。
騎士がバラを摘んで王女に贈ったことから、カタルーニャでは「大切な人に赤いバラを贈る」という文化が根付いたのだ。なんともドラマチックな由来ではないか。

「本を贈る」のは、本屋さんのアイデアだった
バラの由来はわかった。では、なぜ「本」なのか。
実は、本を贈る文化はずっと昔からあったわけじゃない。1923年、カタルーニャ地方の本屋さんが「この日に本を買ってくれたお客さんにバラを一本プレゼントしよう」というキャンペーンを始めたのがきっかけ。
つまり、今でいう書店の販促プロモーションだったのだ。
それがいつの間にか「女性が男性に本を贈る日」として広まり、バレンタインデーのチョコレートと同じように、一つの文化として定着していった。商業的なアイデアが文化になる——これ、なかなか面白い話だと思わないだろうか。
シェイクスピアとセルバンテスも4月23日に逝った
4月23日を「世界本の日」に選んだ理由には、もうひとつ大きな理由がある。
なんと世界的な文豪ふたりが、同じ4月23日に亡くなっているのだ。
ひとりは『ロミオとジュリエット』『ハムレット』で知られるウィリアム・シェイクスピア(1616年没)。そしてもうひとりが『ドン・キホーテ』の著者ミゲル・デ・セルバンテス(同じく1616年没)。
両者は同じ1616年に亡くなっているが、当時の暦の違いにより実際には同日ではないとされている。それでも4月23日は文学に縁のある日として選ばれた。
ふたりの大作家が同じ日に世を去り、しかもシェイクスピアの誕生日も4月23日とされている(正確な記録はないが、洗礼記録から4月23日生まれが有力説)。
「本の日」にこれ以上ふさわしい日があるだろうか——ユネスコがそう考えたのも納得だ。
日本ではどう楽しむ?
日本では1986年に、日本書店商業組合連合会などが4月23日を「サン・ジョルディの日」として制定。また文部科学省は『子どもの読書活動の推進に関する法律』に基づき、子ども読書の日としても定めており、子どもの読書推進活動が各地で行われる。
とはいえ、バレンタインほどの盛り上がりには至っていないのが正直なところ。でも、それがちょっと惜しい気もする。
「大切な人に、おすすめの本を一冊渡す」——これ、チョコよりも長く記憶に残るプレゼントになりそうじゃないだろうか。自分が感動した本を手渡して「これ面白かったよ」と伝えるのは、チョコを渡す以上に、その人のことを考えている証拠かもしれない。
まとめ:バラと本、最高の組み合わせ
4月23日のサン・ジョルディの日をまとめると——
- ドラゴン退治の伝説から生まれた「バラを贈る」文化
- 本屋のプロモーションがきっかけで広まった「本を贈る」文化
- シェイクスピアとセルバンテスの命日という”文学的な偶然”
- ユネスコ公認の「世界本の日」でもある
バレンタインより歴史が古く、ドラゴン伝説まで絡んでいる。これだけ濃い背景があるのに、日本ではあまり知られていないというのが、むしろ不思議なくらいだ。
今年の4月23日、誰かに本を一冊渡してみてはどうだろう。「この本、あなたに読んでほしかった」——そんな一言と一緒に。きっと、より長く記憶に残るはずだ。


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