「キーンコーンカーンコーン」。日本人なら誰もが一度は聞いたことのある学校のチャイム。実はあのメロディー、ロンドンにそびえる巨大な鐘「ビッグベン」でも使われている「ウェストミンスターの鐘」が元になっている知ってた?
毎日のように耳にしていたあの音の正体が、はるか海の向こうの世界遺産と同じ音色だったなんて、ちょっと信じられない話だ。5月31日に動き出したことにちなんで、知っているようで知らないビッグベンの世界をのぞいてみよう。
5月31日はビッグベンが「動き出した」日
1859年5月31日、ロンドンのウェストミンスター宮殿(イギリス国会議事堂)の時計塔で、巨大な時計の針がゆっくりと動き始めた。これが、世界で最も有名な時計のひとつ「ビッグベン」のはじまりだ。
当時としては驚異的な精度を誇り、1日に数秒程度しか狂わない高性能な時計だった。150年以上も前に、これほど正確な大時計を作り上げた技術には驚かされる。ロンドンの街を見下ろしながら、ビッグベンは今も時を刻み続けている。

実は「ビッグベン」は時計でも塔でもない
ここで最初のトリビアだ。多くの人があの時計塔そのものを「ビッグベン」だと思っているけれど、本来「ビッグベン」とは塔の中に吊るされた“鐘”の愛称なのだ。
時計でもなければ塔でもない。あの「ゴーン」と鳴り響く大きな鐘こそが、ビッグベンの本体。重さはなんと約13.5トンもあり、これは小型のトラック数台分に相当する重さだ。(1代目の重さは16トン)
ちなみに時計塔そのものは、2012年にエリザベス女王の在位60年を記念して「エリザベス・タワー」という正式名称がつけられた。だから厳密に言えば「ビッグベンを見に行こう」というのは「鐘を見に行こう」という意味になる。なかなかややこしい話だ。

ビッグベンには「3つの誕生日」がある
ビッグベンには、誕生日と呼べる日が3つもある。
ひとつめは、鐘や時計の部品が時計塔に運び込まれた1858年。ふたつめが、大時計が動き始めた1859年5月31日。そして3つめが、鐘が初めて打ち鳴らされた1859年7月11日だ。
製造から設置まで大時計は5年、鐘は3年かかっていてる。大時計の部品や巨大な鐘を334段もの階段を越えて塔の上まで引き上げるのは、それはもう大仕事だったと予測される。
動き出してすぐ「ひび割れ」した過去
そんな苦労の末に鳴り始めたビッグベンだが、実は順風満帆ではなかった。1859年7月に初めて鳴らされてから、わずか2か月ほどで鐘にひびが入ってしまったのだ。
原因は、鐘を打つための「舌(ぜつ)」と呼ばれる部品が重すぎたこと。そこで、より軽い舌に交換し、ひびがそれ以上広がらないよう縁に四角い穴を開け、さらに鐘の向きを少し回転させて打つ位置をずらすという応急処置がとられた。
面白いことに、この「ひび」は今も修復されないまま残っている。そのため、ビッグベンの音はどこかわずかに独特な響きを持っているとも言われる。完璧ではないけれど、その音色こそが世界中の人に愛される理由なのかもしれない。

そして本題、学校のチャイムとのつながり
さて、いよいよ最大のトリビアだ。ビッグベンは時刻を知らせる前に、「キーンコーンカーンコーン」というおなじみのメロディーを奏でる。この旋律は「ウェストミンスターの鐘」と呼ばれている。
4つの小さな鐘が鳴り、その後でビッグベンが鳴って時刻を告げる。
そう、日本の学校でおなじみのあのチャイムは、ビッグベンが鳴らしているメロディーと同じだったのだ。気づかないうちに、私たちは毎日ロンドンの鐘の音を聞いていたことになる。
このメロディーのルーツは、もともとイギリスのケンブリッジにある教会の鐘の音だったと言われている。それがビッグベンに採用されたことで世界中に知れ渡り、やがて日本にも伝わって学校のチャイムとして広まった、という流れだ。
日本の学校でこのメロディーが使われるようになったのは昭和の中頃からとされている。それまでは「ジリリリリ」というベルの音が主流だったが、耳に優しく落ち着いたウェストミンスターの鐘の音が次第に広まっていったそうだ。

<その席の子はトイレ行ってるんやね?>
身近なところにもビッグベンの音が
このメロディー、よく聞けば学校だけでなく、いろいろな場所で耳にしているはずだ。古い柱時計が時を告げるときの音、玄関のチャイム、駅の発車メロディーの一部など、「ウェストミンスターの鐘」は私たちの生活のあちこちに溶け込んでいる。
次にあのメロディーを聞いたときは、ぜひロンドンの巨大な鐘を思い浮かべてみてほしい。きっと、いつもの音がちょっと特別に聞こえてくるはずだ。

まとめ
5月31日に動き出したビッグベンは、「鐘」の愛称であり、3つの誕生日を持ち、ひび割れを抱えながらも世界中で愛される存在。そして、その音色は遠く離れた日本の学校のチャイムにまでつながっていた。
何気なく聞き流していた「キーンコーンカーンコーン」の正体が、150年以上の歴史を持つロンドンの名物だったなんて――。明日からあのチャイムが聞こえたら、ロンドンに想いを馳せてみてほしい。身近な音にも、思いがけない物語が隠れているものだ。

いつか実際にロンドンの鐘の音を聞いてみたいものだ。
※本記事は一般に公開された情報をもとに執筆しています。最新の情報や具体的な判断については、各事項の公式情報や専門家にご確認ください。


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