「うま味」はおいしさと別物?第五の味の発見

○○の日
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「この料理、うまい!」と感じることと、味覚としての「うま味」は、実は同じ意味ではない。おいしさは香り、食感、温度、見た目や思い出まで組み合わさった総合的な感覚。一方のうま味は、舌で感じる基本的な味の一つである。

7月25日は「うま味調味料の日」。昆布だしのおいしさに疑問を持った日本人研究者が、世界の食文化に新しい味の名前を加えた物語を見ていこう。

7月25日は特許が認められた日

1908年7月25日、東京帝国大学の池田菊苗博士が考案した「グルタミン酸塩を主成分とする調味料製造法」の特許が認められた。

池田博士は、昆布だしには甘味、酸味、塩味、苦味のどれにも当てはまらない独特の味があると考えた。そして昆布の成分を調べ、その味の中心がグルタミン酸であることを突き止めた。

さらに、グルタミン酸の味を料理で使いやすい調味料にする製造方法を発明。この特許取得日にちなみ、7月25日が「うま味調味料の日」と定められたのである。

研究室で新しい物質を作ったというより、昔から日本人が味わっていた昆布だしの中から、まだ名前のなかった味を見つけ出した発見だった。

「うま味」と「おいしい」は別の言葉

うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ五つの基本味の一つだ。基本味とは、ほかの味を混ぜても作れない、味覚の基本となる味を指す。

たとえば砂糖の甘味と塩の塩味を混ぜても、うま味にはならない。うま味には、うま味物質を受け取る仕組みが舌にある。

一方、「おいしい」という感覚はもっと複雑だ。焼きたてパンの香り、揚げ物のサクサク感、冷たいアイスの温度、家族と食べた思い出まで影響する。うま味は、おいしさを作る大切な部品の一つだが、おいしさ全部を意味するわけではない。

映画にたとえるなら、うま味は登場人物の一人。重要な役ではあるが、音楽や映像、物語などがそろって初めて一本の映画になる。

うま味成分は昆布だけではない

代表的なうま味成分は三つある。まず、池田博士が昆布から見つけたグルタミン酸。昆布のほか、トマト、チーズ、味噌、しょうゆなどにも多く含まれている。

次に、肉や魚、かつお節などに多いイノシン酸。そして、干ししいたけなどに多いグアニル酸である。

名前だけ見ると理科室の薬品のようだが、どれも昔から食べられてきた身近な食品に含まれる成分だ。和食だけでなく、トマトやチーズを使う西洋料理、肉や野菜でだしを取る中国料理など、世界中の料理が知らず知らずのうちにうま味を利用してきた。

合わせだしがおいしいのには理由がある

うま味の面白い点は、異なる種類の成分を組み合わせると、単独で使うより強く感じられることだ。これを「うま味の相乗効果」という。

日本料理の昆布とかつお節は、その代表例。昆布のグルタミン酸と、かつお節のイノシン酸が組み合わさることで、うま味がぐっと強くなる。

西洋料理にも同じ仕組みがある。グルタミン酸を含むトマトや玉ねぎと、イノシン酸を含む肉を一緒に煮込むスープやソースだ。干ししいたけと昆布を組み合わせる精進料理では、グアニル酸とグルタミン酸が力を合わせる。

昔の料理人は成分名を知らなくても、試行錯誤の中で「この組み合わせは味が深くなる」と気づいていた。科学が後から、おいしさの経験に説明を付けたのである。

味が薄いのに物足りなくない秘密

料理を食べて「何か物足りない」と感じると、すぐ塩を足したくなる。しかし、足りないのは塩味ではなく、うま味や香りの場合もある。

たとえば野菜スープなら、トマト、きのこ、だしを加えると、塩を増やさなくても味に厚みを感じることがある。逆に、うま味があっても塩味や酸味とのバランスが悪ければ、料理全体がおいしいとは限らない。

料理では一つの味を強くするより、いくつもの味をちょうどよく組み合わせることが大切だ。「うま味=何にでも入れれば完成」という魔法ではなく、味のチームワークを支える選手と考えると分かりやすい。

「UMAMI」は世界で通じる言葉になった

池田博士が名付けた「うま味」は、現在では英語でもUMAMIと表記される。日本語がそのまま味の名前として世界へ広がったのだ。

寿司やラーメンのように料理名が広がる例はあるが、味覚そのものを表す言葉が国際的に使われるのは珍しい。昆布だしへの素朴な疑問が、世界共通の食の言葉につながったのである。

7月25日に食事をするときは、「おいしい」で終わらせず、どの食材からうま味が出ているか考えてみよう。昆布、肉、魚、トマト、チーズ、きのこ。二種類のうま味が見つかったら、そこには相乗効果が隠れているかもしれない。最強の組み合わせを探してみるのも面白いだろう。

「うま味は“おいしい”の言い換えじゃなくて、甘味や塩味と並ぶ味」。いつもの食卓が、小さな味覚研究所に見えてくるはずだ。

参考資料

日本うま味調味料協会「うま味調味料の日」
うま味インフォメーションセンター「うま味の基本情報」
国立国会図書館「うま味の発見」
特許庁「Kikunae Ikeda Sodium Glutamate」

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