蓄音機の日は特許日じゃない?音を保存した大発明

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7月31日は「蓄音機の日」と紹介されることが多い。そして、その理由としてよく見かけるのが「1877年7月31日にエジソンが蓄音機の特許を取得したから」という説明だ。

ところが、アメリカ議会図書館の記録では、特許を出願したのは1877年12月24日、認められたのは1878年2月19日。7月31日は特許取得日ではないのである。では、1877年の夏には何が起きていたのだろう。

7月31日は「蓄音機の日」

蓄音機の日は、音を記録して再生する技術の始まりを振り返る記念日として知られている。スマートフォンで音楽や声を簡単に残せる現代からは想像しにくいが、19世紀まで音は、その場で鳴ったら消えてしまうものだった。

文字は紙に残せる。写真なら景色を残せる。しかし、人の声や演奏は本人がいなければ再現できない。音を保存するという発想は、当時の人にとって「時間を瓶に詰める」ようなものだった。

ただし、記念日の由来として広まっている7月31日の特許取得説は、公式な特許の記録とは一致しない。

きっかけは電話と電信だった

エジソンは最初から音楽を楽しむ機械を作ろうとしたわけではない。1877年、電話や電信の改良に取り組むなかで、通信内容を紙に刻み、あとから再生できないかと考えた。

アメリカ国立公園局に残る資料では、エジソンは同年7月17日ごろ、電話の声を記録し、ゆっくり再生して書き取れる装置をスケッチしている。

現在のボイスメモのように「あとで聞く」だけでなく、速く届いた通信をゆっくり再生して文字にするための機械だったのだ。音楽プレーヤーの祖先は、仕事の伝言メモから生まれたともいえる。

声を溝へ変える仕組み

初期の蓄音機は、円筒に錫箔を巻き付けた、見た目にも機械らしい装置だった。口元の筒へ話しかけると、声による空気の振動が薄い膜を震わせる。

膜につながった針が、その振動に合わせて錫箔へ細かなへこみや溝を刻む。今度は同じ溝を針でなぞると、膜が同じように震え、元の声に近い音が再び空気中へ現れる。

つまり蓄音機は、声を小さなデコボコへ翻訳し、デコボコを再び声へ戻す機械だった。電気で音声データを保存する現代とは方式が違うが、「音の特徴を別の形へ変えて残す」という基本は同じである。

最初の録音は「メリーさんのひつじ」

エジソンが試作機へ吹き込んだ言葉として有名なのが、童謡「メリーさんのひつじ」の一節だ。機械から自分の声が返ってきたとき、発明した本人も驚いたと伝えられている。

ただし、試作機が完成した正確な日にも議論がある。かつては1877年8月12日と紹介されたが、研究記録や助手の日記から、実際には同年12月ごろだった可能性が高い。

発明の歴史には、ひらめいた日、図面を描いた日、試作した日、成功した日、出願した日、特許が認められた日がある。どれを「誕生日」と呼ぶかによって日付が変わってしまうのだ。

エジソンは「音を記録した最初の人」ではない?

さらに意外なのは、音の振動を記録した人物はエジソン以前にもいたことだ。フランスの発明家エドゥアール=レオン・スコットは、1857年に「フォノトグラフ」という装置を作っている。

この装置は音の波をすすを塗った紙へ線として描けたが、当時はその線から音を再生できなかった。音を目で見ることには成功したものの、聞き直すことはできなかったのである。

エジソンの大きな功績は、記録だけでなく録音と再生を一台で実現したことだ。「音を描く機械」から「過去の声を呼び戻す機械」へ進化させた。

円筒から円盤、そしてスマホへ

初期の錫箔は傷みやすく、数回再生すると破れてしまうこともあった。その後、記録媒体はろうを使った円筒へ改良され、さらに複製しやすい平らな円盤レコードが広がった。

レコード、磁気テープ、CD、音声ファイルと姿は変わったが、針が溝をたどって音を取り出すレコードは現在も使われている。約150年前の考え方が、今も音楽を楽しむ方法として生きているのだ。

身近なレコードをよく見ると、表面には細かな溝がびっしり刻まれている。その一本の道の揺れに、歌声も楽器も拍手も保存されている。

発明の誕生日は一日では決められない

7月31日の蓄音機の日は、音を残せるありがたさを考えるよいきっかけだ。ただし、「この日に特許を取得した」という説明は、公式記録と食い違うことも一緒に覚えておきたい。そのため7月31日は、エジソンが助手に設計図を渡して製作を指示した日、とされている。

誰かへ話すなら、こう伝えてみよう。「7月31日は蓄音機の日だから、音楽を聞いて音のありがたみを一緒に噛み締めよう」ってね。発明は一瞬のひらめきではなく、考え、作り、失敗し、直し、世に出すまでの長い物語なのである。

参考資料

Library of Congress「History of the Cylinder Phonograph」
Library of Congress「Recorded Sound Timeline」
Thomas Edison National Historical Park「Edison’s Path to the Phonograph」
Thomas Edison National Historical Park「Origins of Sound Recording」
日本オーディオ協会「本日12月6日は音の日!」

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