毎日当たり前のように使っている消しゴム。でも、「なぜゴムで文字が消えるのか」「最初に使ったのは誰なのか」と考えたことはあるだろうか?歴史をたどると、科学者ジョゼフ・プリーストリーと、科学器具職人エドワード・ネアンという2人の名前が登場する。
しかも、ゴム製の消しゴムが現れる前、人々が使っていたのはパンだった。身近な文房具に250年以上の物語があるなんて、ちょっと驚きじゃないか?
消しゴムの始まりをたどると、1770年に行き着く
1770年、イギリスの科学者ジョゼフ・プリーストリーは、著書『A Familiar Introduction to the Theory and Practice of Perspective』の中で、天然ゴムが紙の鉛筆跡を拭き取るのに非常に適していると記した。
ただし、そこに4月15日という日付は書かれていない。4月15日は海外で「National Rubber Eraser Day」などと呼ばれることがあるものの、制定団体や正式な制定年は確認できない。したがって「この日に消しゴムが誕生した」と断定するより、1770年に消字性が印刷物へ記録された、と考える方が正確だ。
消しゴムが登場する前、人々は何で文字を消していた?
答えは…「パン」。
そう、食パンのやわらかい部分をこねて丸め、それで鉛筆の文字をこすって消していたのだ。今からすると信じられないかもしれないけど、当時はそれが常識的な方法だった。パンは適度な柔らかさと粘り気があって、鉛筆の黒鉛(グラファイト)をある程度吸着してくれたのだ。
現代でもデッサンでパンを使う方法が知られているが、持ち運びや保存を考えれば、文房具として作られた消しゴムの方がずっと扱いやすい。パンからゴムへ——それは小さいようで大きな変化だった。

記録したプリーストリー、販売したネアン
プリーストリーの記述には続きがある。その天然ゴムは、ロンドンの科学器具職人エドワード・ネアンが販売しており、約1.3センチ角の1個が3シリング、数年は使えると紹介されているのだ。
つまり、プリーストリーは消字性を印刷物に残した重要人物だが、記述した時点ですでに商品を売っていた人物がいた。「誰が最初に発見したか」は単純に決めにくく、記録したプリーストリーと、商品として広めたネアンの両方が、消しゴムの初期史に登場するのである。
「rubber(ラバー)」という名前の由来
イギリス英語で消しゴムを「rubber(ラバー)」と呼ぶことを知っているだろうか?天然ゴムが鉛筆跡をこすり取る用途に使われたことが、この呼び名につながったとされている。
英語の「rub(こする・拭き取る)」という動詞が語源で、「rubbing out(こすって消す)」から「rubber」と名付けられた。イギリスでは今でも消しゴムのことを「rubber」と呼んでいる(アメリカでは「eraser」が一般的だ)。
つまり消しゴムの英語名は「こすって消すもの」そのものを意味している。シンプルで的確な名前だ。
普及するまでにはもうひと苦労あった
「消せることは分かった。でも、すぐに普及したの?」というと、そうでもなかった。天然ゴムには大きな弱点があったからだ。
夏の暑い日には溶けてベタベタになり、冬の寒い日にはカチカチに固まってしまう。温度変化に弱かったのだ。保存や携帯が難しく、使い勝手が悪かった。
この弱点を大きく改善したのが、19世紀にチャールズ・グッドイヤーやトーマス・ハンコックらが発展させた「加硫(かりゅう)」という技術だ。天然ゴムを硫黄とともに加熱することで、強度や耐久性を高められるようになり、ゴム製品の実用性が大きく向上した。
ちなみに今の消しゴムの多くは、天然ゴムではなく塩化ビニール(PVC)や合成ゴムで作られている。より消しやすく、紙を傷めにくいよう改良が重ねられてきた。
日本で進化したプラスチック消しゴム
現在よく使われる白いプラスチック消しゴムは、日本のメーカーも開発と改良を重ねてきた。消しゴムメーカーのシードは、1950年代にプラスチック消しゴムを開発した歴史を紹介している。
トンボ鉛筆の「MONO消しゴム」は1969年に単品発売され、長く使われてきた製品として2011年度のグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した。根拠のない「世界一」と言わなくても、長年の改良と支持そのものが、日本の文房具づくりの面白さを物語っている。
まとめ:失敗したっていい、消しゴムはそのためにある
ゴム製消しゴムの歴史をたどると、1770年のプリーストリーの記述と、ネアンによる販売に行き着く。それ以前にはパンで鉛筆跡を消す方法があり、その後は加硫技術や新素材、日本メーカーの改良によって、現在の使いやすい文房具へ進化した。
次に消しゴムを手に取ったとき、「昔はパンを使っていたんだよな」と思い出してみてほしい。きっと誰かに話したくなるはずだ。
「失敗してもいい。消しゴムは250年以上、書き直す人を支えてきた。」
参考資料
- Joseph Priestley, A Familiar Introduction to the Theory and Practice of Perspective(1770年、Folger Shakespeare Library書誌)
- Science Museum「Wonderful Things: Peruvian Rubber Ball」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「消しゴムの歴史を知りたい」
- 株式会社シード「SEED 100年の歩み」
- トンボ鉛筆「MONO ブランドヒストリー・受賞歴」
※4月15日は「National Rubber Eraser Day」などと紹介されることがありますが、プリーストリーの1770年の一次資料に日付の記載はなく、公式な制定団体も確認できません。



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