え、4月17日が「恐竜の日」なのはなぜ?
日本では4月17日が「恐竜の日」として紹介されることがある。とはいえ、国や特定の団体が正式に制定した記念日ではなく、恐竜史に残る探検の出発日にちなんで広まった、いわば親しみやすい記念日の呼び名だ。
その主人公は、アメリカの探検家で動物学者のロイ・チャップマン・アンドリュース。本人の著書には、探検隊が1922年4月17日に北京を出発し、カルガン(現在の張家口)へ向かったと記されている。
翌1923年、探検隊はゴビ砂漠で、科学界が恐竜のものと認識した最初の卵化石を発見する。ここで大切なのは、出発が1922年、卵の発見が1923年という点だ。1年違いなのに、よく混ざって紹介されているのである。
「恐竜の卵」と認められた歴史的発見
今では、恐竜が卵を産んだことは広く知られている。しかし当時は、恐竜の卵だと科学的に認識された化石がまだなかった。
アンドリュース率いるアメリカ自然史博物館の中央アジア探検隊は、1922年、1923年、1925年など複数回にわたってモンゴルを調査した。そして1923年7月13日、探検隊員のジョージ・オルセンがフレーミング・クリフで卵化石を発見した。
実は、卵らしい化石そのものは1859年にフランスでも見つかっていたが、当時は恐竜の卵だと正しく認識されていなかった。そのためゴビ砂漠の発見は、「科学界が初めて恐竜の卵と認めた発見」と表現するのが正確だ。

驚きの深掘り3選
① 最初は「卵の主」を間違えていた
発見場所には小型の角竜プロトケラトプスの化石が多かったため、卵もプロトケラトプスのものだと考えられた。ちなみにプロトケラトプスはトリケラトプスと同じ角竜の仲間だが、「直接の祖先」と決まっているわけではない。
卵の近くにいた別の恐竜は、「卵を盗んだ犯人」と疑われ、オヴィラプトル(卵泥棒)と名づけられた。ところが1990年代、同じ種類の卵の中からオヴィラプトル類の胚が見つかる。どうやら泥棒ではなく、自分の卵を守っていた親だったらしい。恐竜の汚名が、約70年後に晴れたのだ。
② 昔のゴビも、意外と砂っぽかった
「昔のゴビ砂漠には植物が生い茂り、大きな湖があった」と説明されることもある。しかし、卵が見つかったジャドフタ層の研究では、白亜紀後期のフレーミング・クリフ周辺は半乾燥の砂丘地帯だったと考えられている。
ずっとカラカラだったわけではなく、季節的な雨や一時的な流れ・水場はあったようだ。それでも「緑いっぱいの巨大湖」というより、砂丘の間に、ときどき水と命が集まる環境を想像するほうが現在の研究に近い。
③ インディ・ジョーンズのモデル説は「ロマンのある未確認説」
アンドリュースは帽子をかぶり、荒野を車で走り、危険の中で化石を探した。確かに見た目も生き方も、映画『インディ・ジョーンズ』の主人公を思わせる。アメリカ自然史博物館も彼を「現実のインディ・ジョーンズ」のように紹介し、モデルだった可能性に触れている。
ただし、ジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグが「アンドリュースを直接モデルにした」と明言した資料は確認されていない。だからこれは、断定できる事実ではなく、よく知られた説。似ているからこそ広まった、ロマンのある話として楽しむのがよさそうだ。

日常のどこで使える?
恐竜好きの子どもには、「オヴィラプトルは卵泥棒だと思われていたけれど、実は子育て中だったかもしれないんだって」と話してみよう。恐竜の名前に残った“冤罪事件”は、きっと印象に残る。
映画好きの友達には、「インディ・ジョーンズのモデルとも言われる探検家がいるけれど、公式に確定した話ではないらしい」と伝えれば、事実と伝説の違いまで楽しめる。
そして4月17日には、「今日は(正式制定ではないけれど)日本では恐竜の日と呼ばれているよ」と話せば、ちょっとした雑学になる。
まとめ:出発の日から始まった恐竜史の大冒険
1922年4月17日、アンドリュースの探検隊は北京を出発した。その翌年、ジョージ・オルセンが卵化石を見つけ、恐竜研究の歴史を大きく動かした。
卵の親をめぐる推理は後に覆り、かつての環境像も研究によって細かく描き直されている。科学の面白さは、一度決まった答えを守ることではなく、新しい証拠が出たら物語を書き換えることにあるのかもしれない。
4月17日には、ゴビ砂漠へ向かった探検隊と、約70年かけて汚名を返上したオヴィラプトルを思い出してみてほしい。誰かに話したくなったら、それが雑学の醍醐味だ。
参考資料
- Roy Chapman Andrews, The New Conquest of Central Asia(1932年、Biodiversity Heritage Library)―1922年4月17日の出発記録
- American Museum of Natural History「Dinosaur Eggs」―1923年の卵化石発見と再同定
- American Museum of Natural History Research Library「Central Asiatic Expeditions」―探検隊の公式記録
- American Museum of Natural History「The Legacy of Roy Chapman Andrews」―アンドリュースとインディ・ジョーンズ説
- Hasegawa et al.(2009)ジャドフタ層の堆積環境・古気候に関する研究
- Mongolian Journal of Paleontology掲載論文―ジャドフタ層の風成・河川堆積環境
※本記事は上記の博物館資料、一次資料、研究論文をもとに、一般向けにわかりやすくまとめています。



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